理想の都世知歩さんは、




りっちゃんが誰なのか。

定かでないけれど、私が待たせてしまったかもしれない人は此処に居るから。


「ごめんね」


眸に彼を映した後、そっと頭を下げ、謝る。


何かを伝えたそうな沈黙が続いて、その後私の髪に小さな手が触れたのが分かった。

驚いて顔を上げると、目が合ったちっちゃな王子様は慌てて手を離し、中へ入って行ってしまった。



ドアが閉まって振り返ると朝陽が上りつつあって。

私は何だか不思議な気持ちで、下りてきた階段を上がった。





家へ戻り、ドアを閉めた私は昨夜のことを伝えなくてはならないもう一人のひとのところへ。



隣の部屋の前に立ち、意を決してノックする。


返事はなかったけれど、小さくドアを開けて中を覗いてみた。


隙間から心地よい朝の風が流れる。


窓が開けっ放しだ。



「しつれいします」



小さな声で挨拶して中へ入ると、在るのは、背の低いシンプルなベッドに俯せで眠る都世知歩さん。


テレビのある物の少ない部屋。


初めて、入った。


彼は布団もちゃんと被らず、顔を壁際とは逆の方へと向けて眠っていて。

だから毎日変な方向に寝癖がついているのかなと思ったら、零れてしまう笑みを堪えるのに必死になる。


「都世知歩さーん」


傍まで行ってそっと名前を呼んでみるけど彼はピクリとも動かない。

ぐっすり幼い顔して眠っている。


とよちほさんも眠っているとき、こんな幼い顔になるなんて驚きだ。


少しへの字になっている口が可愛くて、噴き出す。赤ちゃんかい。


あと。

こんなことを言うと変態くさくなってしまうの承知で言うけれど、都世知歩さん、ふわふわ凄く良い香りするの何で!?





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