理想の都世知歩さんは、




「失礼します」



最寄駅の近くに建ち並ぶ洋服屋さんの内の一軒に、今日から正式にお世話になる古着屋さんがあった。


リニューアルオープンしたのだけれど、元々も古い喫茶店を改装してできたお店。

色の濃い茶色の分厚い木がこのお店を形作ってる。


四つに分けられた窓のあるドアも、その左右に並ぶ、木の実のフェイクが飾られた窓たちも凄く可愛い。


触れるとき思わず笑みが零れてしまうような、小さな桜が添えられたドアノブを捻って中へ入る。



「「いらっしゃーい!!」」

「わぁっ」


ドアを開けた瞬間に響いたのはクラッカーの音。


びっくりして立ち止まると、そこから左右に分かれて、先輩店員さんと店長さんが立っていた。

既に何度も顔を合わせているお二人。


「びっくりした!?」


ミディアムブラウン、眉上で前髪を揃えたストレートロングの艶やかな髪を後下で一括りに結んでいるのが左谷(さや)さん。


「こめちゃんいい反応だね~」


クラッカーの煙に咽ながら、沁みるらしい目に涙を浮かべているのが店長の三谷(みたに)さん。アッシュの髪に顎髭があるからちょっとワイルドな感じに見えるけど、お若く見えます。



「び、びっくりした…お二人ともどうされたんですか!?」


自分の目元を覆いたいくらいお仕事の出来そうなこのお二人は、私のことをこめちゃんと呼ぶ。

理由は初めてお会いした時、緊張で私の声が小さく、『わひら こめ』と聞こえたらしいから。



「どうしたって、そりゃあこめちゃんの正式な初出勤だもん。ね、三谷さん」

「そうそ。小さなうちの店の、たった三人の家族だもん」

「…だもんとか…きもいっすね…」

「酷いねあーちゃん」





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