理想の都世知歩さんは、
「えっ」
夜。
帰宅した私は、珍しく玄関で迎えてくれた都世知歩さんに急かされつつ手を洗って、急かされつつ席に着けと言われて仰せのままにした。そうして今、驚いている。
「と、とよちほさん……」
声が震える。
「嬉しそーだな」
目の前で席に着いた後、頬杖を付いてニヤリと笑んでいる。
私が見開いた目から雫を落としそうになっている理由。
それは。
それ、は。
「何ですかこのご馳走ぉぉおお」
目の前の狭いテーブルに所狭しと並べられたご馳走にあり!!!!
「衵、今日頑張っただろうから。ご褒美」
どうしよう、どうすればいいんだ。心が温かくて泣きそうになるじゃないですか。
「そんなサプライズ、どうして言ってくれないんですか」
「いや、サプライズだからだろ…」
「とよちほさんからの…?」
既に私の目からは恐らくCGで涙が零れていたことだろう。実際はそんな簡単に泣けないものね。
「ちがう」
「え、違うの!?誰!?誰なんです!?」
「うるさいなお前……サンタだよ」
「サンタァ!!?」
あっどうしよう。
今素で「もうちょっとましな嘘吐こうよ」と思ってしまった。ごめん都世知歩さん。
「さ、サンタさんは…サンタさんは、その、十二月にだね」
「何言ってんの?というかそこですかツッコミどころ」
「え?逆にどこがあるんですかエイプリルフールは明日ですとか言えばよかったんですか」
私は会話を続けつつお箸を手に取った。
中心に陣を取るお寿司の御一行に出陣するためだ。自分でも感動で何を言っているかわからない。