BULLET for MY VALENTINE
何百という数の結婚をこの教会で行ってきたが、これ程人の温度差がある結婚式はかつて見たことがない。


中身のない結婚式。

結婚式というのは、どのような形でもいいのだ。


普通もあれば、このように豪勢なものもあり、貧しい者は教会の裏に生えていた花をブーケともしていた。


形はどうあれ、中身の、人の暖かさ、愛があれば何でもいいのだ。



だから、私はこの新夫妻を心より祝ってやることが出来ない。

きっと、彼らはこの老人共の欲に食い散らかされ、悲劇の道を歩むのだろう。


そんな先行きを思うと、私が何をできる訳でもなく、ひたすら忘れ、愛無き亡者への花束を手向けるしかなかった。






その夜、久しぶりに私は酒に溺れた。

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