BULLET for MY VALENTINE
男……ワーナーは公園での演説の後、1人隠れるように家へと戻った。

家…家と言うより、バラック小屋だ。新築だった昔の面影は無く、庭は荒れ果て、家の所々のペンキが剥がれ落ち、錆びかけ、汚れていた。

「ただいま」


靴の埃を落とし、中に入る。奥の部屋から会話が聞こえたので覗いてみた。


『本日は全域的に晴れでしょう。夜も西部は曇りますが、雨の心配はありません。ただ、沿岸部は空襲にご注意下さい…』


会話はテレビの天気予報だった。会話でも何でもない。ただ、そのテレビの前に気だるげにソファーに腰掛ける少年がいた。

少年はワーナーに気付くと目だけを向けた。が、すぐに興味無さげにテレビへと視線を戻す。

「ワーナーさん帰ってたんだ。どうだった?演説?上手くできた?」


「あ、ああ…その、ロイ、母さんはどうした?」

「忘れたの?」

「……え」

「今日は僕の母さんの誕生日だったんだけどな。まあ、仕方ないよね。家族の仲より英雄さんは平和を語る方が大事だよね」

「………」

少年の言葉に成す術無くワーナーはうなだれ、ひっそりと自分の部屋へ戻った。


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