BULLET for MY VALENTINE
しかし、探りはあまり入れない。私は神父だ。気品に溢れた者でなくてはならない。


しかし、どう足掻こうとも私が人であることに変わりはない。道を間違えまいと神父になって20年余り。とっくにそんな慈愛の精神など、どこかに置いてきてしまった。


私は根っからの神の信者ではない。神父になって間もない内に、私は神を棄ててしまった。

戦争に、駆り出されたのだ。私は4年間、衛生兵、通信兵としてコキ使われた。


血塗れな世界だった。生き抜くことに命を賭ける、スリルに充ちていた。蟻の行列を踏み潰すように私達の隊列に砲弾が撃ち込まれ、機関銃の弾が枯木を伐採するが如く、馬鹿みたいな量でばら蒔かれた。


戦争が終わった頃には、私は何もかも失っていた。私の背より高いものがなかった。


妻子どころか、人っ子一人いない。私が愛した村は地図上から消えていた。






私は、神を棄てた。

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