BULLET for MY VALENTINE
だが、自暴自棄にはならなかった。酒に走ったり、死に急ぐことは決してなかった。





――――生きなければ――――



私の念頭にあったのはこの言葉だった。戦争での経験が、脊髄反射で私が私自身を生かすことに決めたのだ。


人である以前に、生き物であることを選んだのだ。

きっとこの時、私は人であることを辞めたのだろう。人間らしい感覚、感情、見解全てを棄てて、動物である道を選んだ。




言うなれば、私は愛を棄てたのだ。



汝、隣人を愛せよ。



その隣人が居なくなり、その愛を私自身に向けたものの、私は人であることを辞めてしまった。


それはきっと自分を愛することを辞めてしまって、つまり愛を棄てたのだろう。

< 9 / 51 >

この作品をシェア

pagetop