彼とバスケと私
私が話している間、翔樹は口を挟まずじっと聞いてくれていた。
「私はね、病気になった時は今までの努力は無駄だったって思ったの。
でもね、それは間違いだった。
努力をし続けたから、元々私に呆れていた人も私を認めてくれたし、自然と支えてくれる人が増えたの。
しかもね、その時期があったから今の私はいる。
バスケが出来なくて皆に教えたりしていたから、今皆に注意したりできてるの。
その足が治れば、翔樹はまたバスケが出来る。
だから、その時たくさん努力してね。
気づいたら周りには、支えてくれる人がたくさんいるから」
俯いていた翔樹は顔をあげ、私の目を見て言う。
「俺、今までして来たことってなんだったんだって思った。
努力しても、怪我したら全部水の泡だって…。
でも、違うって美由の話聞いてわかった。
ありがとな…」
その目は少し潤んでいて、でもしっかりと強さがあった。
「よかった………安心、した……」
そうため息混じりに呟いた私を、翔樹はそっと抱きしめた。