彼とバスケと私
ほんと、バスケの話になると目がキラッキラ輝き出すんだから、翔樹は。
「猛特訓したからね」
「そっかー!そんなに入るってすげーな!
俺なんかスリーは10本中1本入るぐらいだし。」
確かにスリーが苦手らしい翔樹が決めた所はあまり見ないかも。
……けど。
「翔樹はその他のプレーが凄いからいいじゃない。
ドリブルが上手いから攻めれるし、周りをよく見れているからパスも正確で。
センターとしても凄くて。
ディフェンスだって、最近どんどん上手くなってる。
私は、それら全部下手だったの。
だからシュートを猛特訓したんだよ。
どれか1つぐらい得意になりたくて……」
嫉妬したくなるくらいバスケの才能があるのは、1週間ほどしか翔樹を見ていない私でもわかる。
1年でも先輩達に劣らない実力。
いや、越してる先輩だっているんだ。
羨ましい。ほんと。
「そんなの、人それぞれじゃん」
ずっと黙っていた翔樹が、あたりまえのように言う。
「センスがある人がいればない人もいる。
そんなのあたりまえだろ?
センスがある人でもやらない人は出来ないし、
ない人でも努力すればある程度上手くなれる。
美由は、センスがなくても努力でその実力を手にしたんだよ。
それはセンスがある人と比べたって仕方ない。
美由は美由なりの努力で掴んだその実力に胸を張ってればいいんだよ」
努力で掴んだ実力……か。
センスがない人でも、努力で実力をつけることは出来る。
でも……
「私はシュートしかないんだよ?」
「どれか1つだけでもいいんだよ。
どんな事でも実力は実力だ。
それに、シュートはバスケで1番大事な事じゃんか。
シュート決めなきゃ勝てないんだから。
それに、美由はシュートだけじゃなくてちゃんと他にもあるだろ?」
他………?
私、他に凄い事なんてないよ?
そう思ってキョトンと彼を見つめる。
「指導、だよ」
「指導………?」
それは、マネージャーになってから監督に言われた事。
「この1週間で、お前のおかげでプレーが良くなった奴は何人いた?
いっぱいいるだろ?
そうやって、選手に的確な指導をして成長させるなんて誰でも出来る訳じゃない。
監督だって言ってただろ?
それは十分、お前のすっごい実力なんだよ」