彼とバスケと私
私の、凄い実力……?
そうか。何もプレーだけじゃないんだ。
プレーが出来なくたって、私には出来る事があるんだ…。
皆を成長へと導く、凄い凄い事が出来るんだ…。
そう考えると、私だって、ただの無能なんかじゃないんだって思える。
センスなんて関係ないよね。
そのための努力なんだもんね。
「そろそろ帰ろっか。もう結構遅いしさ」
翔樹の言葉を聞いて時計を見ると、シュートを打ち始めてから結構時間が経っていた。
「もうこんな時間!?
じゃあね、翔樹!」
翔樹に挨拶してから倉庫へ向かおうとすると、
「は?」
というマヌケな声が聞こえてきた。
「送るよ、俺」
「え?」
「送るよ」って……私を?
「遅いしいいよ!それに、翔樹遠回りだよ?」
私の家は、駅とは少し違う方向にある。
電車通学の翔樹には遠回り。
「遅いから送るんだよ。危ないだろーが!
ほら、倉庫は俺が閉めてくるから早く着替えてこい」
ひょいっと私からボールを奪い取ると、更衣室の方へ私を少し押してから倉庫へ歩きだす翔樹。
「あ、ありがと!」
そう言って更衣室へ駆け込んで、急いで制服に着替える。
すぐに更衣室を出ると体育館前で壁にもたれて待っていた翔樹。
「ごめんねっ」
少し息を切らしながら言ったからか、少し笑って「いいよ」と言った翔樹。
それを見てドキッと鳴る私の心臓。
その事を気にしながらも、体育館の鍵を閉める翔樹を見つめる。
なんか………翔樹の見方変わったなぁ。