初恋は雪に包まれて


「私はね、」と言葉を置いて、再び大きな瞳で私を見た夕ちゃんは、

「伊東くんがあんたに告白したことも驚きだけど、あんたが伊東くんを振ったってことも驚きなのよ。」と続けた。


確かにそうだよなぁ、と思う。なんて贅沢なことをしているんだろう。

伊東くんの彼女になりたい人なんて、数えてもキリがないくらいいそうなのに。

そんな彼を、こんな地味な女が振るなんて。



「あんたわかってる?伊東くんを振るなんて、宝くじ三億円当たったのに辞退します!って言ってるようなものなのよ。」

「えっ、そ、そんなに?」

「そうよ、出来ることなら私があんたの代わりに名乗り出たいくらいよ。」


……夕ちゃん、それは彼氏さんが泣くんじゃないかな。


彼女には付き合って3年になる恋人がいる。何度か会ったことのあるその彼はとても物腰が柔らかい優しい男性で、

昔から様々な世代から愛されているあのテディベアのキャラクターとどことなく似ているのだ。



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