初恋は雪に包まれて


きっと私は、まだまだ彼のことをほんの少ししか知らない。これから、もっと彼のことを知る機会は訪れるのだろうか。


……もっと、伊東くんのこと、知りたいなぁ。

そんなことを無意識のうちに考えていたなんて。

この時の私は、まだ知らない。




「伊東くん、こんな大きな車持ってたんだね。」

「ん、中古だけどな。」


中古というわりに、この車は綺麗だ。

それを伝えると、洗車したばっかりだから、と教えてくれた。


「……洗車って、ガソリンスタンドとかにある、あのトンネルみたいなところに入るやつ……?」

「トンネル?……あぁ、」


"トンネルね。"と彼は少し笑った後、今回は手洗いしたけどな、と続けた。

……あぁ、なんだか、心地いい。


正直なところ、二人きりの車内なんてどうなることだろうの身構えていた。

だけど、彼との会話がこんなに心地いいなんて。

口数は少ないものの、私の言葉にはキチンと返してくれる。それが嬉しくて、私もついついおしゃべりになってしまう。


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