初恋は雪に包まれて


いやぁ驚いた、と言いながら廣田さんは顎の下に生えている髭を親指でなぞる。その手の仕草は、伊東くんもよくするもので。


……仲がいいと癖も似るのかな。

そんなことをぼんやりと考えていると、アイツがさ、と彼が口を開いた。


「女の子連れてくるのなんて初めてだったからさ。」

「女の子……。」

「そう、だからてっきり日和ちゃんを俺に紹介するために連れてきたのかと思ってたんだけど、」


違うみたいだね。

と、そんなことをさらっと口にする彼に、私の顔に熱が集まるのがわかった。


彼女なんて。そんな、まさか。私なんかが伊東くんの恋人なんて、釣り合わないのに。


"だから、俺と付き合ってほしい"


不意にあの日の言葉を思い出した。あの真っ直ぐな瞳。真っ直ぐな言葉。

……顔が熱い。



「日和ちゃん、」

「はっ、はい……。」

「……顔真っ赤だね。」


……やっぱりバレている。この薄暗い店内なら、もしかしたらわからないかもしれない、という考えは呆気なく散った。

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