初恋は雪に包まれて


「日和ちゃん、いいなぁ。」

「えっ?」

「あんな無愛想なヤツじゃなくて、俺にしない?」


俺めっちゃくちゃ大事にするよ?とニコニコと笑いながら話す廣田さんに、また顔が熱くなる。

……なんてことを言い出すのだろう!


もちろん、冗談だということは理解している。……しているけど。

全く自慢にならないが、今まで本当に地味に生きてきたのだ。男の人にこんなことを言われるなんて、慣れていない。


思わず顔を手で扇ぎながら、早く伊東くん帰ってこないかな、と考える。

すると、その願いが通じたかのように彼が戻ってきた。




「なんでお前がここにいるんだよ。」

「淳が日和ちゃんを一人にするからだろ。」


廣田さんのその言葉に、彼が微妙に顔をしかめたのがわかった。

すると彼は、どけ、と一言言うと廣田さんをソファーから立たせる。


そんな彼とは反対に未だニコニコしながら立つ廣田さん。男の嫉妬は醜いねぇ、と呟いたかと思えば、そのまま私たちに背中を向けカウンターに戻る。

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