初恋は雪に包まれて
「待ってたのか。」
「……えっ?」
嫉妬ってなんとことだろう、と考えていた時だった。
ごめんな、と目の前に置かれたお酒を指差しながらそう謝る彼に、また首を振り否定する。
「ううん、そんなに待ってないよ、気にしないで。」
待っていた、といってもほんの数分だ。それに廣田さんが話し相手になってくれていたので、待っていたという感覚すらない。
「アイツに変なこと言われてないか。」
「……変なこと?」
伊東くんは、まぁいいや、と小さく言いメニューをこちらへ渡す。腹減ったろ、と続ける彼と一つのメニューを覗いた。
気が付けば最初は一組だけだったお客さんも増え、今では満席だ。
ドアを開けたものの埋まる席を見て引き返す人もいたほどで。お店は大繁盛らしい。
「いいお店だね。」
お店の雰囲気も良くて、ご飯は美味しい。そして廣田さんの人柄はきっと誰からも愛される人柄。