初恋は雪に包まれて
と、思っていたのだが。
「あら、私今日テーピングしてもらったわよ?」
「あっ、ご、ごめんなさい。えっと……この値段ですね、申し訳ありません。」
時計の針も進んだ、十二時過ぎ。
急いで電卓を打ち直しそれを見せると、納得したように財布を出す。
日和ちゃんが間違えるなんてめずらしいわねぇ、とニコニコ話す高橋さんに再度謝る。
「あらぁ、こんなの失敗に入らないから気にしないの。ね?」
「いえ、そんな……あっ、丁度頂きますね。」
お大事になさってください、と続けると、高橋さんはもう一度ニコッと笑い、ありがとうね、と受付カウンターを後にした。
はぁ、と息を吐く。
今の高橋さんで午前中の患者様は全て帰られた。コインケースの中を精算しカウンター内を片付けていると、不意に右肩を叩かれた。
「日和、おつかれ。」
「夕ちゃん、お疲れ様。」
「なによ、元気ないじゃない。」
そんなことない、とは否定出来なかった。実際、少し元気がなくなっていたのだ。