初恋は雪に包まれて
そんなことよりなんでここにいるんだ、と可愛らしい丸っこい瞳を向けながら話す彼女に、彼はそう投げ掛ける。
無表情で無愛想ともとれるその態度だが、彼女は臆する様子もない。
「お前大学だろうが。」
「今日は創立記念日なんですー。」
だからお休みなんだよ、と嬉しそうに話す。
どうやら彼女は大学生らしい。
「ふうん、じゃあ行くわ。」
彼はたったそれだけそう言うと、青信号に変わった横断歩道を渡ろうとする。
気がつけばさっきまで一緒だった夕ちゃん達は、向こう側の道歩道へと渡りきっていた。
足を踏み出した彼に着いていこうとすると、また呼び止められる。
「あっ、淳ちゃん待って!」
「……何だよ。」
「怒らないでよー。ね、ちょっとこれから時間ある?」
彼の表情が微妙に変わった。
「ない。これから仕事。」
「嘘つき。休憩時間長いことくらい知ってるよ。」
チッ、と聞こえないくらいの大きさで舌打ちをしたのがわかった。
……そんなに行きたくないのだろうか。