初恋は雪に包まれて
「ね? 淳ちゃん。」
「……わかったから、先行ってろ。」
一向に折れず、可愛らしくお願いをする彼女にどうやら彼は諦めたらしい。
うん!、と元気よくした彼女は、またもや可愛らしくにっこりと笑い、彼に背中を向けて歩きだす。
それを見つめながら、はぁ、と彼はため息をつく。
「引き止めてごめんな。」
「ううん、そんな。」
そもそも私には用はないはずなのに、留まったのは私の方だ。
首を横に振り否定する。
「ちょっと行ってくるわ。」
「あっ、うん。……き、気をつけてね。」
特に気を付けることはないはずだが何故かそう続けた私を彼は小さく笑い、彼女の背中を追いかける。
その時。体を反転させる瞬間に、彼の手が私の手に何かを押し付けるように触れた。
彼は長い脚で歩いていく彼を、無言で見つめる。
私の手のひらには、あの小さなチーズケーキが一つ握らされていた。