月光-ゲッコウ-
少し酔った社長を支えながら、店を出た。


迎えの車の前まで来ると、社長は加雁さんに手をあげて「また」と言うと、車に乗った。


あたしも軽くお辞儀をして、車に乗ろうとすると腕を捕まれた。


「また近いうちに会いましょうね。」

そういうと、すぐパッと手を離した。


あたしはそれを無視して車に乗り込む。


捕まれた腕が痛い。



「…加雁くんは千歳を気にったみたいだな。」

『えっ?』


急に社長に言われて社長の方を振り向くと、それと同時に押し倒された。


しゃ、社長?


どうしたんだろう?


普段は酔っててもドライバーがいる中でこんな事はしないのに。


「自宅に帰るのは取り止めだ!いつものトコへ行け!」


倒したあたしの腕を掴みながら、いつもより荒々しくドライバーに言った。


後部座席で秘書を押し倒し、荒い口調の社長に動揺しながらも、ドライバーは「はい」と言って車を走らせた。


さっき加雁さんに捕まれて痛かった腕は、今度は社長に捕まれて痛い。


あたしは何もいえなくて、社長を見つめた。


社長はあたしの首筋に舌を這わせた。


『しゃ、社長ッ!?』


思わず叫ぶと、耳元で社長が言った。


「おまえは私のモノだ。他の男に渡しはしないし、行かせない。」

社長ッ…?


な、何が起こってるの?


そこにドライバーが…


ここはまだいつものホテルぢゃなくて、車の中で…


『ひゃあっ…』


意識が朦朧とする。


初めて荒々ししく抱かれた。


それもドライバーのいる車の中で。


ドライバーが気まずそうにしてるのが、なんとなくわかった。

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