月光-ゲッコウ-
うちの秘書課の暗黙のルール。
第一秘書は社長の1番お気に入りの愛人がなる。
入社してしばらくは、そのルールを知らなかった。
そのルールを知ったのは、入社して2ヶ月。
社の重役会議で、初めて社長のいる場で仕事をした日だった。
会議終了後、片付ける私に社長は話かけた。
「新堂くん、どうだね?
仕事は慣れたかね?」
秘書課配属された日に1度だけお会いした限りで、新人社員の事なんて興味がないと思っていたから、突然の事に驚いた。
『あ、はい。
まだ、至らないトコもありますが、社長のサポートをしっかり出来る様頑張ってます。』
あたしの言葉に社長は微笑んだ。
「今日仕事後空けておきなさい。」
意味がわからなかった。
何故、社長は私にそんな事を言ったのか…
そのやり取りを見ていた、秘書課の羽鳥課長が続いて声をかけてきた。
「君は選ばれたんだよ。ちょっとこちらへおいで。
説明してあげよう。」
選ばれた?
意味がわからない。
わからないまま羽鳥課長について行った。
そこで知ったのが、この秘書課での暗黙のルールだった。
その日、あたしは社長の愛人の1人となった。