月光-ゲッコウ-
約束の時間。
彼と彼の両親は沈んだ様子で訪れた。
母が応接間に彼と彼の両親を通し、あたしとあたしの両親と向かい合って座った。
「いつも出向いてもらってすみませんね。結納の話でしたらこちらから出向きましたのに。」
父が第一声にそういうと、彼の母親の顔が青白くなった。
「…あ、あの、その事ですが…」
少し言いにくそうに話す彼の母親に、彼の父親が「私から話す」と言って、あたし達3人を真っすぐに見つめた。
彼の父親はいきなり立ち上がり、頭を下げながら言った。
「申し訳ございませんッ!!」
その行動に訳がわからず、あたしと父と母ゎ顔を見合わせる。
彼と彼の母親も立ち上がり頭を下げた。
「婚約の事ですが、解消していただきたい。」
その言葉に、あたしも両親も驚いた。
父が冷静に「何かうちの娘に不都合が??」と聞くと、彼の父親がバッグの中から分厚い封筒をテーブルの上に差し出した。
「…息子には…もう1人、お付き合いしていた女性が居た様で、そちらの女性を妊娠させてしまったと…。私どもも、1週間前に聞かされてまして驚きました。」
他の女性と付き合っていた??
妊娠…??
あたしの頭の中は混乱して、身体の血の気が引くのがわかった。
あたしの両親も、言葉が出ない。