月光-ゲッコウ-
封筒の中身を見て、あたしの中の何かが弾けたのがわかった。
涙よりも、笑い声が出た。
あたしのその笑い声で、みんなが手を止めてあたしを見た。
「…もう、男なんて信用しない。」
ポツリと言うあたしに、母はより一層泣いた。
泣きたいのはあたしだ。
封筒を片手に、彼と彼の両親の元に近寄る。
心配そうに見守る父を横目に、あたしは言った。
「あたしへの悪い気持ちは、たった100万?あたしはもう、男は信用できないししない、1人で生きて行くと決めました。あなたのせいで…あたしは寂しく1人で生きていくの。100万なんかじゃ足りない。」
あたしはこの時悟ったのだ。
男の甘い言葉なんかに騙されない。
ずっとなど…
永遠の愛なんてない…
あたしの言葉に驚く父と母。
その場はいっきに静かになった。
しばらくすると、彼の父親が口を開いた。
「…わかりました。千歳さん、本当に申し訳ない。後日、あと200万を持ってきます。」
「お願いします。…もう、話す事はありません。お引き取りください。」
あたしがそう言うと、彼と両親は頭を下げて出て行った。
こうして婚約は解消。
その後、彼と2度と会うことなく、大学を卒業した。
今思えば、付き合っている時の彼の行動はおかしかった時がたくさんあった。
彼としか恋愛した事のないあたしは、疑う事を知らず、ただ信じてた。
今気付いてももう、遅い話。
だけど、これがなければ今のあたしはいない。