月光-ゲッコウ-
違う?
それって…麻生さんは社長を好きだったって事?
思わず手を止めて麻生さんの顔を見ると、また切ない顔で笑った。
「あなただから話すのよ?内緒にしててね。…そう…私は1人の男として、社長を愛してたの。正確にいえば、今も。」
今も?
そんな風には見えない。
優しい旦那さんと子供と、幸せに暮らしてるし…
そんな素振りも見たことない。
「今の夫を愛してない訳じゃないわ。すごく優しくていい人だし、社長への愛を越えれると思った…けどね…」
左手の薬指にはめられたリングをクルクルと回しながら、麻生さんは言った。
麻生さんの切ない顔は社長のへの愛が、感じる様な気がした。
愛人交代をして、その思いは告げられない。
奥さんがいる人で、自分は愛人だから…。
あたしは社長を愛してないから、本当の社長を見ようとしてない。
けど、麻生さんはしっかり社長を見てきたんだ。
だから、寂しい人って思うんだ。
あたしには気づけない。
「あなたがそんな顔しないで。安心して。私はあなたを妬んだり、恨んだりとかしないから。私は私で今を望んだの。」
自分で望んだ?
第一秘書の交代で、そうなった訳じゃないって事?