月光-ゲッコウ-


加雁さんからの服を着るのは嫌だけど、このホテルに感動したから、これくらいは言うこと聞こう。


個室に入って包みを開くと、白に近い黄色のドレスと、スワロフスキーとパールがいっぱいついたミュールが入っていた。


まさかドレスだとは…


しかも高そう…


でも、このドレスの色…なんだか少し白い月みたい。

ドレスに着替えると、気を引き締め直す。



「やっぱり、お似合いですね。そのドレス絶対似合うと思いました。」


『あ、ありがとうございます。』


ウェイターに誘導されて、用意された席に行ってイスに座る。


相変わらず加雁さんはニコニコしながら、あたしの顔を見ている。


『あ、あのっ!今日だけですから!』


よしっ!おもいきって言えた。


まずちゃんと言っておかないと。



あたしの言葉を無視するかの様に、ワインが注がれたグラスをあたしの前に差し出す。


「乾杯。」


ニコっと微笑んで言うので、慌ててグラスを重ねた。

この人、わざと無視してるよね?


きっとあたしが、これからはないって言うのをわかってるんだ。


それとも、向こうも今日だけと決めてるのかも…


小田切社長の愛人がどんなモノか知りたいだけだろうし…




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