月光-ゲッコウ-
6.繊月
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3年前。
社長に見初められて、初めて夜を過ごした次の日だった。
羽鳥課長から、今日から社長の第一秘書として仕える様にと言われた。
第一秘書の意味でさえ、前の日に羽鳥課長から聞いたばかりだったのに、まさか自分がその地位になるなんて思ってなかった。
たった1度。
昨日の夜に1度だけ、社長に抱かれただけなのに。
「…しかし異例だな。こんなに早く第一秘書になったヤツは新堂、おまえが始めてだ。」
その言葉に、嬉しさなどなかった。
ただ、第一秘書という地位はあたしの生きてく過程には必要だった。
その日の夜も、社長と過ごした。
「千歳の口座を作って、とりあえず200万入れておいた。来月から毎月ここに給料とは別に振り込む。好きに使うといい。」
愛人料。
これがあたしの、必要なモノ。
抱かれる事も、社長と過ごす時間も、抵抗も苦痛もない。
すべてはコレの為。
欲求を満たすため…