月光-ゲッコウ-
加雁さんにつれられて車に乗ると、繋いでいた手を離した。
自宅の場所を告げると、車は動き出す。
強引な人だけど、ちゃんとうちに帰してくれるんだ。
『ちゃんと帰してくれるのね。』
「強引に自分のモノにするのは遊びの時だけだ。俺は千歳の身体が欲しいんじゃない。心が欲しい。」
心…?
心で繋がっていても、いずれ離れて行くのに…。
身体で繋がっていた方があたしにはいい。
普通の女なれば、加雁さんの言葉を嬉しいと思う。
だけどあたしは、その言葉を信用出来ない。
口ではなんとでも言える。
「さっきも言ったが、焦りはしない。ただ、何かあったら俺に言え。千歳のよき理解者なってやる。俺は数少ない、おまえの過去や気持ちを知ってる人だぞ?」
『…ありがとう。』
知っているからといって、気を緩めすぎたカモしれない。
けど、今までわかってくれる人など周りにいなかったから…
気を緩めてしまう。
あたしは小田切社長の愛人。
それは変わらない。
加雁さんは…お友達。
それでいいんだ。