月光-ゲッコウ-


はっきり言おう。


あたしさ自ら望んで愛人でいる。


1人の男のモノにはならない。



車が止まる。


窓の外を見ると、自宅マンションの前に着いていた。

あたしは車のドアを開けて降り、振り返って車の中の加雁さんに話しかける。


『今日はありがとう。ぁたしは自分の意思で自分の為に愛人でいるの。あなたとはいい友達でいたい。』


「…頑固な女だ。今はそのつもりだ。だから、何かあったら言ってこい。また近いうち飯を食おう。」


一言多いんだから。


頑固じゃない。


これでいいの。


ドアが閉められ車が走りだす。


いい人なのかな…とりあえず。


傲慢だけど、たまに優しい。


つかめない人だ。


でも、少し揺らぎそうだった。


あたしはやっぱりどこかで愛し愛されたいと思ってるのかもしれない。


けれど、もう悲しい思いはしたくない。


あたしはもう誰も愛さないと決めたのだから。


1人で生きて行くと決めたのだから…―――――。



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