月光-ゲッコウ-
7.三日月



あれ以来、加雁さんとはたまに食事をしている。


会社の話や、日常の話やいろんな話をした。

本当に強引にあたしを抱く事もなく、いい友達として、理解者として。


相変わらず、毎回〔そろそろ俺のモノになりたくなったか?〕とか言ってくるけど。


あたしの気を抜ける場所を作ってくれている。



社長の愛人としても、変わりなく週に数回夜をすごしている。


今日も…


横で眠る社長をベッドに残して、ベランダに出る。


今日は満月。


見上げれば、そこにある月。


なぜだろう。


最近は月を見ても、涙がでない。


加雁さんが息抜きの場所を作ってくれるからだろうか?

今まで溜めてたモノが、定期的に吐き出されるだけで、これだけ違うんだ。


そういえば、彼は1度結婚して離婚をしている。


離婚の理由は知らないけれど、だからこそあたしの気持ちを少しでも理解出来るのかもしれない。


部屋に携帯を取りに行って、再びベランダに戻ると、カメラで月を撮った。



〔今夜はあたしの好きな満月です。いつも悲しくなるのに、なんだか綺麗に見えるの。加雁さんがよき理解者になってくれたおかげかな?ありがとう。〕


月の写真を添付してメールを送ると、5分もかからないうちに返事がくる。


〔なんたって俺は千歳の月だからな。〕

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