月光-ゲッコウ-
まったくこりない人だなぁ。
加雁さんのメールにも、月の写メが付いていた。
あたしが普通ならば…
きっとこの人を好きになっていただろう。
あたしの中の暗闇は暗すぎて、
誰かもう1度愛する事なんて出来ない。
素直に好きになれたらどんなに楽なんだろうか。
暗闇の恐怖に恐れる事なく、愛する気持ちを…もう思い出せない。
ベランダから出て、再び社長の眠るベッドへ戻る。
社長も…あたしに良くしてくれる。
麻生さんが愛した人だ。
けれど社長があたしへの執着心が強くなるたび、あたしは1歩後ろに下がる。
もう少し…
たと半年。
あたしは社長と深く関わりすぎた…
そして何よりも加雁さん。
彼にはもっと深く…関わり過ぎた。
甘えすぎた。
あたしが1人で生きていくと決めたのに、揺るがされ過ぎている。