月光-ゲッコウ-


その女事あたしは、今にも泣きそうな顔で話かけてきた。


だいぶ飲んでるらしく、かなり酔っていた。


自分の事を一方的に話始めたあたしの話を聞いて、加雁さんは驚いた。


自分と似た境遇の持ち主だったから…。


そこで加雁さんはあたしに自分の話もした。


「会社を大きくする為に大事な時期だったんだ。かまってやれなくても、家にあまり帰れなくても、わかってくれてると思ってたんだ…。」


今にも泣きそうな切ない声で言った。


『奥さんの事愛してたんだね。愛してたから信じてたんだよね…』


あたしは思わず加雁さんを抱き締めた。


力一杯抱き締めた。


あたしもあの人を愛してたもの…信じてたもの…


少し驚く加雁さんは話を続けた。


「そしたら千歳は俺に言ったんだ。〔自分は誰かを失う怖さから逃げた。新しい月の光を探す事をやめた。けれど、あなたは諦めないで。きっとあなたをずっと愛してくれる人はいる。あたしの様にならないで…。暗闇の中は辛いから〕って。」


あ…たしが…?


抱きしめていた腕を緩めて、加雁さんの顔見た。


加雁さんは優しく微笑むと、あたしの頬に手をやった。

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