月光-ゲッコウ-
「小田切社長に内緒で、私とこの後いかがですか??」
この後?
え?
なに?
あたし誘われてんの?
『…いえ、社長を自宅まで送り届けなければ行けませんのでちょっと。』
「そうですか…じゃあ、連絡先だけでも。小田切社長には内緒にしときますから。」
この人、あたしが社長の愛人だってわかってるんだ。
だから、可愛がられてるんですね。なんて言って来たんだ。
あたしが社長のお気に入りだから、興味があるんだろうか。
あたしが返事を濁していると、名刺をスッと差し出して来た。
「あなたの名刺も頂けますか?」
名刺?
貰ったからには渡さない訳にはいかない。
あたしが名刺を差し出すと、優しく微笑んで近づいて来た。
えっ?
そう思った時には、唇をふさがれていた。
ゆっくりと唇が離れる。
「やっと見つけた」
え、なに?
その時社長が帰って来た。
さっとあたしから離れると、さっそく社長に酒をすすめる。
なんなの…今の?
なんであたしキスされたの?
酔ってるから??
きっとそうだ。
大企業の若社長ともなれば、彼女もたくさんいるに違いない。
あたしは酔いの席にいたせいで、からかわれただけだ。
やっぱり苦手だ…。