【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
「小川、何にすんの?」
隣でオレと同じようにメニューを見つめる小川に問いかける。
はきはきして見える小川は以外にも迷った様子で…少ししてから口を開いた。
「えっと…サラダベースの…」
「え?!マジ?
やっぱりクレープはサラダだよな!」
サラダクレープが好きな小川に少し興奮してうっかり声を張り上げたら、周りを歩くサラリーマンやら学生やらに熱い視線を送られた。
白い目…とも取れるような視線に刺されて気まずそうに苦笑いを浮かべていると…
「興奮しすぎですよ(笑)」
クスクスと笑う小川の姿が目に映った。
…笑ってる。
無表情を決め込んでいた小川の笑顔にオレは呆気に取られて…
無表情の顔からは想像もできない幼い笑顔に見入っていると、はっとした小川に睨みつけられた。
「…なんですか?」
「なんでもありません…」
木陰のベンチで2人で並んでクレープを食べる。
うっとおしい太陽も、青い葉っぱのガードに太刀打ちもできない様子だった。
微かな木漏れ日は、夏のものでも気持ちがいい。
「あれ?
でも小川、確か甘いモノが食べたいって言ってなかった?」
「だって…迷ったけど、やっぱりクレープはサラダかなって」
少しだけ口を尖らせた小川はやっぱり少し幼く見えた。
無表情の時が大人びて見えるだけで、表情を変えれば歳相応の女の子だった。
「だよな~。
やっぱりサラダだよなぁ。気が合うな」
何気なく言った言葉に、小川はオレを見て微かに微笑んだ。
木陰だったせいか、小川の頬がほのかにピンク色になったのが今回ははっきりと分かった。
微かな微笑が、うれしそうだったのが分かった。
一緒に帰って知ったのは…小川の想いが本物だって事。
あと…
表に出さないだけで結構純情だって事。
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