【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
「小川ヒカリ…いる?」
その日の帰り、オレは小川の教室を訪れた。
掃除中の教室は、黒板消しのクリーナーの音やら机を運ぶ音で溢れている。
「あ、はい」
オレが聞いた女子生徒が教室の中にいた小川に声をかけに行った。
女子生徒に声を掛けられた小川は、オレに視線を移して…少しだけ微笑んだ。
その微笑がキレイで…オレの胸が小さく痛む。
…オレがこれからしようとしてる話は…きっと小川を傷つける。
それなのに、微笑む小川にどんな顔をすればいいのか分からなくて…オレは曖昧に笑った。
「まさか山岸先輩から迎えに来てくれるなんて思わなかったです」
校門を出た辺りで小川が微笑みながら言った。
最初は無表情だと思っていた小川は、よく見ていると結構表情を変えている。
ただ、その一つ一つの表情が小さいだけで。
わざと抑えたような笑顔。
わざと決め込んでいるように見える無表情。
それが小川のスタイルなのか、それとも何か理由があるのか。
その辺はよくわかんねぇけど。
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