【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
どんなに虚勢を張っていても、本当の小川は強くなんかない。
どんなに平然を装っても、本当は苦しかったはずなのに…
友達の関係が、つらかったはずなのに…
緊張しながらもオレに微笑んで、
苦しいのにオレにそんなところは見せなくて。
オレに気付かせないように、一生懸命に接してくれてた。
本当は…オレの知らないところで何度も泣いてたのかもしれない。
あんないじめで泣くくらい弱いんだから…
昨日、図書室のドアに寄りかかりながら小川の泣き声を聞いていて…
声をかけようか迷ったけど、オレはそのままその場を後にした。
オレが泣かせたんだから、オレがなぐさめるべきだったのかもしれない。
だけど、そんなのは一時のなぐさめにしかならないから…
オレがなぐさめたら、きっと小川はまた無理して平気な顔してオレの隣に戻ってくる。
…泣き出しそうにつらい気持ちを我慢して。
…それじゃダメだから。
小川はオレの傍にいたってつらいだけだから。
オレは声をかけなかった。
じわじわと液体のように体内を汚染していく痛みを感じながら、そのまま振り切るように足を進めた。
それがなんの痛みなのかは自分でもよく分からなかった。
きっと、泣かせた事に対する罪悪感とか、小川を傷つけた自分への自己嫌悪とか、情けない自分への後悔とか…
そんなたくさんの自分を責める想いと、小川への謝罪の気持ちだと思うけど…
小川はいい子だから。
すっげぇいい子だから。
だから…ちゃんとした相手見つけて幸せになって欲しい。
もう、オレの友達なんかしてちゃダメなんだ。
やけに痛む胸に眉を寄せながら、オレは一度も振り返らずに離れた。
陰気に見える西日が刺すようで、オレは帰り道、一度も顔が上げられなかった。
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