【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
それから1週間。
小川は一度もオレに顔を見せなかった。
オレも小川に会いには行かない。
…行くつもりはない。
この1週間で、教室のある階の違う小川とは、会おうとしなければほとんど会わない事に気がついた。
移動教室も違う校舎だし、昼飯だって、小川は弁当だしオレは学食だし。
帰る方向は一緒でも、下駄箱で小川を見かけなかった。
こんなにも会わないもんなんだなって、なんだか感心して…
同時に少しだけ寂しくなった。
だけど、そんな寂しさはオレのどこまでも自分勝手な想いのせいだから。
小川の事を想う度に広がり続ける痛みを感じながら、オレの学校生活は小川に会う前の生活に戻った。
「山岸、ボタン取れかけてるよ」
指摘されてYシャツの裾を見ると、一番下のボタンがブランと落ちそうにぶら下がっていた。
「あぁ…別にいいよ。
どうせとめねぇし」
「とめなくたってだらしないよ(笑)
ちょっとじっとしててくれれば付けて上げるよ。
本当は着たまま針通しちゃいけないんだけど…
山岸だしいっか(笑)」
「てめぇ(笑)まぁ、いいや、頼む」
茶色いストレートの髪が目の前で揺れるのを見ながら、オレは言われた通り動かないようにして立っていた。
長い髪が、オレに小川を思い出させる。
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