【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
そういえば…
小川にもおんなじような事言われた事があったっけ。
制服のズボンの裾をちょっと破いちゃった時、小川が縫ってくれるとか言って…
『脱いでください』
『…小川のえっち(笑)』
『えっ…違いますっ
針は着たまま刺しちゃダメなんですっ』
真っ赤な顔してた小川がやけに面白かったっけ。
クールに見えるけど、男に免疫なくて純粋で…
オレと肩が触れるだけで赤くなってたっけ。
だけど、それがオレにばれるのが嫌でいっつも平気な顔しちゃって。
…そんな小川を見てるのが―――…
「はい、できた」
その声にはっとしてボタンに目を移すと、きっちりと定位置に戻ったボタンが目に映った。
「サンキュー」
「どういたしまして(笑)
ってゆうか、制服ちゃんと着てないとまた相沢先輩に怒られるよ」
「へいへい」
だらしなく着崩した制服を軽く直しながら席に着くと、前の席の充がニヤニヤしながら振り向いた。
「なんだよ、気持ちわりぃな」
オレが笑いながら言うと、充がオレのボタンを指差す。
…なんだよ、まだ取れてんのかよ。
そう思ってボタンに視線を落とそうとした時、充が眉をひそめた。
「…ボタン付けてくれたの朱莉だろ?
なんだよ、いつもみてぇにノロケねぇの?
『やっぱり朱莉はいい女だよなぁ』とか『オレにもまだ可能性あるんかなぁ』とか、うっぜぇくらいにいつもは言うくせに…
なんかあったのか?」
「……」
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