【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜

そういえば…

小川にもおんなじような事言われた事があったっけ。




制服のズボンの裾をちょっと破いちゃった時、小川が縫ってくれるとか言って…


『脱いでください』

『…小川のえっち(笑)』

『えっ…違いますっ

針は着たまま刺しちゃダメなんですっ』


真っ赤な顔してた小川がやけに面白かったっけ。


クールに見えるけど、男に免疫なくて純粋で…

オレと肩が触れるだけで赤くなってたっけ。


だけど、それがオレにばれるのが嫌でいっつも平気な顔しちゃって。


…そんな小川を見てるのが―――…



「はい、できた」


その声にはっとしてボタンに目を移すと、きっちりと定位置に戻ったボタンが目に映った。


「サンキュー」


「どういたしまして(笑)

ってゆうか、制服ちゃんと着てないとまた相沢先輩に怒られるよ」


「へいへい」


だらしなく着崩した制服を軽く直しながら席に着くと、前の席の充がニヤニヤしながら振り向いた。


「なんだよ、気持ちわりぃな」


オレが笑いながら言うと、充がオレのボタンを指差す。


…なんだよ、まだ取れてんのかよ。


そう思ってボタンに視線を落とそうとした時、充が眉をひそめた。


「…ボタン付けてくれたの朱莉だろ?

なんだよ、いつもみてぇにノロケねぇの?


『やっぱり朱莉はいい女だよなぁ』とか『オレにもまだ可能性あるんかなぁ』とか、うっぜぇくらいにいつもは言うくせに…

なんかあったのか?」


「……」


.




< 35 / 46 >

この作品をシェア

pagetop