【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
充の言葉に、オレは一瞬訳が分からなくて…
少ししてから理解した。
そうだよな…
確かに今のは朱莉だったのに…
どうしたんだ、オレ…
朱莉に旅行のお土産もらった時は充にうっとおしがられるほど自慢したよな。
『クラスでもらったのオレと瞳だけだってっ』
なんてかなりはしゃいで。
朱莉に絆創膏もらった時だって
『あんな強気なのにさ、オレのケガ心配してくれんだぜ?
あ~…もう本当諦めつかねぇよ』
なんか嬉しさ80%、悔しさ10%。みたいな。
…ん?100になんねぇ…
まぁ、いいや。
こないだ胃薬もらった時だって…
『オレがカツ丼ばっか食ってるの知っててくれてんだよなぁ…
振った男にまで気使ってさ…なんか…泣けてくる』
なんて、言いながら本当に泣きそうになって充に気持ち悪がられたし。
でも、今は…
朱莉がオレにかなり接近してたのに、オレの心臓は爆発しなかったし
朱莉の匂いにムラムラもしなかったし、
いつも走る痛みも感じなかった。
ただ…
小川の事を考えてた。
目の前の朱莉じゃなく、頭の中の小川の事を。
…オレ、どうかしてる。
おかしいだろ。
自分でも気付かないくらいに自分を責めてたんかな…
だから、こんな事になったんかな。
小川を泣かせた事を後悔して、小川を思い出してたんかな。
だけど…
オレが思い浮かべてたのは…小川の泣き顔じゃない。
小川の―――…
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