【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜


何かがおかしい。


充には笑って誤魔化したものの、オレの中にはわだかまりが残ったままだった。


だって、考えられない。

今までだったらありえねぇんだ。


朱莉にドキドキしないなんて。

あんな距離にいる朱莉を意識しないなんて。


ありえっこねぇのに…



ありえちゃったから…どうする?って話で…


なんでありえちゃったのかって話で…


それは…

多分…多分、小川が関係してるような気が…しなくもない訳で…



いやいやいやっ!

ありえないっ


ありえないって!


そりゃいい子だよ。

いい子だけど…オレは朱莉を好きなんだ。


うん。そうだ。


だから…だから、さっきのはたまたまで…


ああ、絶対たまたまだっ



オレは抱えてた頭を上げて勢いよく立ち上がった。

そしてずかずかと音がしそうな程力強く足を進めて、朱莉に話しかける。


「朱莉っ」


「ん?なに?」


…ドキドキしてこねぇな。

足りねぇって事か。


「オレに触れ」


「は?」


「いいから、触って!お願いだからっ」


オレの必死の頼みに、朱莉は顔をしかめながら…

オレの鼻を摘んだ。


「これが、なに?」


「…なんてもありまふぇん」


…ドキドキっていうか…苦しくはあるけど…

こんな感じだったっけ?


なんか、それすら思い出せねぇ…


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