【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
「とりあえず、朱莉を吹っ切れてよかったな」
充は軽くそんな風に言ったけど…オレにはどうもしっくりこない。
朱莉を吹っ切れたのは確かによかったと思う。
あの失恋を、過去として見る事ができるようになったのは…
だけど…
問題はそこじゃねぇ。
問題は…オレの中の朱莉のいた場所が空いたって事だ。
『好きな女』のポジションが空いたって事だ。
別に、誰も入らないんならそれでいい。
むしろその方がいい。
好きな女がいなくたって、普通に生活できるし、学校だって楽しいし…
なのに…
なんか、嫌な予感がするんだよな。
ざわざわした、不安なのか、不満なのかよくわかんねぇイライラした気持ち。
大事なもの失くしたような、ぽかんとした気持ち。
なんだ、この苛立ちは。
なんだ、この虚しさは。
別に恋愛に命かけてきた訳でもないのに、朱莉の事が吹っ切れた途端に…
なんか知らないけど、詰まらなくなったような…
何かが足りないような…
言葉にできない気持ち。
なんだ、これ。
なんなんだよ…
悩みすぎでおかしくなったんかな…
…きっとそうかもしれねぇな。
この期に及んで頭に浮かぶのが小川の事だなんて。
おかしくなったに決まってる。
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