【短編・番外編】恋の罠〜恋を見つけた時〜
だけど、小心者のオレに小川との約束を破る事なんかできる訳なくて。
結局、下駄箱で小川を待ってるオレ…
下校時間の下駄箱は大勢の生徒で賑わっていて、顔の広いオレは何人にも声を掛けられて冷やかされて…
全員に説明するのも面倒くさくなって、途中からは愛想笑いで誤魔化した。
ほこりっぽい下駄箱に、夏の日差しが入り込む。
時間的にはもう夕日なんだろうけど、そんな事は感じさせない勢いで肌を焼こうとする太陽は少しうっとおしい。
夏は嫌いじゃないんだけど…じめっとした暑さはどうも好きになれない。
…なんか、胃がおかしい。
気分の問題かもしれないけど痛いような気がするし。
オレが大げさにため息を漏らした時、後ろから小川の声がした。
「お待たせしました」
「うぉっ…おう」
「じゃ、帰りましょうか」
「…おう」
オレの返事を聞くなり、小川はオレの先を歩き出した。
男子生徒数人が小川を振り返る中、颯爽と歩く小川の後ろをオレが歩く。
オレの数倍落ち着きを払った小川。
リード権は完全に小川…
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