翼のない天狗
「人魚の寿命は五百年ほどです。人が都を地に造るずっと前から、人魚は水中に都を築いてきました」
《そうであったか……引き留めてすまんかった》
「いえ。くれぐれもその玉を」
《解った》
深山の肩に止まっていた黒鳴はそこを離れ、氷魚のすぐ傍に降り立った。氷魚を見上げ、声を顰める。
《氷魚殿、まさかとは思うが、人間がそなたや他の人魚を狙っている》
「ええ。そのお沙汰については耳にしました」
《用心されよ。決して無理などせぬように》
黒鳴は気付いていたのだろう。氷魚がこれから自身の身を曝して何かをしようとしていることに。
《そうであったか……引き留めてすまんかった》
「いえ。くれぐれもその玉を」
《解った》
深山の肩に止まっていた黒鳴はそこを離れ、氷魚のすぐ傍に降り立った。氷魚を見上げ、声を顰める。
《氷魚殿、まさかとは思うが、人間がそなたや他の人魚を狙っている》
「ええ。そのお沙汰については耳にしました」
《用心されよ。決して無理などせぬように》
黒鳴は気付いていたのだろう。氷魚がこれから自身の身を曝して何かをしようとしていることに。