翼のない天狗
「兄様の体液が、皆を呼ぶのですよ?」
 魚は水の中に生きるのですよ。それと同じで当然のこと。
 そんな口ぶりで氷魚は話した。さあ、どうなる。私はこれを話した。どうなる。
「……」

 再び、場は沈黙に入った。
 泡が小さな音を立てて登ってゆく。

 氷魚が目を閉じると、片方の頬を涙が伝った。




「氷魚殿」
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