翼のない天狗

 きっと、必ず会いましょう。きっと、きっとです。

 その言葉。あなたは存在が力だ。あなたの存在が、私の二十年の孤独の光だった。死に瀕した私を救ったように、私はあなたを救えるだろうか。私はあなたの闇に一筋の光を差すことができるだろうか。

 こんな問答は無用だ。

「氷魚……」
 清青は深く深く氷魚を抱きしめる。実原の屋敷でそうしたよりも、もっと強く、優しく。



「沙子様」
 氷魚の部屋から出た沙子に流澪は様子を問う。沙子はゆったりと笑んだ。

「しばし、二人だけに」
 その顔には、ある種の確信が映る。
「氷魚殿もそれを望まれるはず」

 流澪は何か言いたげな表情をしたが、それを飲み込んで追従した。
 そうだろう。氷魚が求めいていたのは、清青。


< 132 / 224 >

この作品をシェア

pagetop