翼のない天狗
「まだ、このようなことをしているのか」
どこからか現れた声は、有青の脇を通り、帝へ寄っていく。帝に対して何と荒れた語使い。
「変わらんな」
錫杖を御簾から抜く。それは音で解る。
変わらない? 帝と面識のある者なのだろうか。
「な……何をしに参っ……た」
帝も非道く動揺した声色だ。
「報告だ」
錫杖の主はけろりと言う。しかし言葉は重く響く。
「人魚は渡せぬ」
人魚? 人の体に魚のヒレを持つと言われる人魚のことだろうか。
「人魚などもう良い……疾く疾く立ち去れ」
「言われるまでもなく」
ふ、という薄笑いが聞こえたような気がした。そして途端に背の重みは消える。動く。
どこからか現れた声は、有青の脇を通り、帝へ寄っていく。帝に対して何と荒れた語使い。
「変わらんな」
錫杖を御簾から抜く。それは音で解る。
変わらない? 帝と面識のある者なのだろうか。
「な……何をしに参っ……た」
帝も非道く動揺した声色だ。
「報告だ」
錫杖の主はけろりと言う。しかし言葉は重く響く。
「人魚は渡せぬ」
人魚? 人の体に魚のヒレを持つと言われる人魚のことだろうか。
「人魚などもう良い……疾く疾く立ち去れ」
「言われるまでもなく」
ふ、という薄笑いが聞こえたような気がした。そして途端に背の重みは消える。動く。