翼のない天狗
 有青は不審を声に乗せる。
「誰でございますか、その男」

 ざっと男を見る。
「私とそう年の頃も変わらぬ……」

 声が詰まった。端正な顔立ちの中で光っている双眸。

「その目の色……」

 藤紫。
 私と……同じ。
 
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