翼のない天狗

「天狗」
　天狗。有青は自分の口から漏れた言葉に再び驚く。紫青の目が向けられた。

「有青、お前は考えたことがないか。どうして自分の目の色は皆と違うのか、と」
　有青は視線を泳がす。あります、と小さく答えた。

「私もずっと考えていた。私の目の色、そして髪の狐色は何故なのだろう、と。そして、恐ろしくなかったか？自分を見る回りの目が」
　ためらうが、はいと答える。

「悩んだろう。自分は何者なのだ、と」
　これにはゆっくりと首を横に振る。

「私は、父は死んだ者と思って生きて来ました。母上、実原の爺様や婆様がそう言い、私のこの目は父の紫青から受け継いだ物で、恥じる物ではないとも。実原の爺様は立派な方です。だから私の父もそうで、私は父が居なくとも平気でした。私は、実原有青と名乗ることができました。しかし」