翼のない天狗
「……しかし?」
「内裏で現れた何者かは、私を押しつぶし、帝を揺るがした。そして帝は、その者を私の父だとおっしゃった」
「紫青様……」

 有青と花の君の声が重なる。
「「あなたは何者なのですか」」

「私か……」
 紫青は咀嚼するように言う。
 この二人に全てを話す日が、いつか来るだろう。

「私は天狗だ」
 声はどこか嬉しそうだ。

 そして紫青は覚醒する。空気が震えた。

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