翼のない天狗
 ――何だ、これは。先のと同じ感覚。体が圧される。母は何ともないのか?

「重いだろう」
 何とか顔を上げる。
「何を……っ」

「私も初めて父様に会ったときは、身が潰されるかと思った」
「父様?」

「私の本当の父親、冥王山の大天狗清影坊」
「てんぐ」
「そして私は白天狗清青」
「せいじょう……」

「では聞く」
 清青は有青の額に触れた。重いものが消えていく。有青はしっかりと顔と清青の顔を見た。金色の髪、曙色の瞳。美しい。

「お前は何者だ? 実原有青、吾が息子よ」

 私は何者だ?
 重いものが消えるのと同時に、意識まで遠のいていく。
 私は何ものだ? 私はなにものだ? わたしはなにものだ?
 頭の中をぐるぐると廻る問いかけ。
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