翼のない天狗
風駆ける
「老けたな」
清青は緩く笑った。
「阿呆、己が老けぬのよ」
それなりの貫禄を携えて、深山は茶化すように答えた。眉間や口元、目元の皺が深い。
「付いて来い」
飛ぶ深山の後を、清青は跳んで追いかける。旧友は懐かしい感覚を楽しんだ。
着いた先は深い山の中である。生い茂った草をかき分け、深山は止まった。見ろよ、と促され、清青は何事かと覗く。
「黒鳴……」
にわかには解らないような土盛り。既に草がその上を埋めているが、烏の頭の白い骨が墓標のように乗っていた。
「まあ三十余年も生きたからな。烏にすれば長生きだろ」
「ああ」
清青は膝をつき、そっと手を合わせた。