翼のない天狗
女はコオリ、という。族長の娘であり、氷魚の姉。
「氷湟様……」
熱い吐息が混ざる声。清青には閨中の声とわかる。再び闇に閉ざされた世界に、雲の切れ間の如く光が漏れている箇所があった。
「姉様?」
また氷魚の声。先ほどからずいぶんと大きくなった影が、氷魚の形になってその隙間を覗く。清青はその影に追従した。中には一糸纏わぬ姿の氷湟と汪魚がいた。ふたりは氷魚の存在に気付かない。
「汪魚殿」
朔の夜である。小さな灯りが揺れ、閨のふたりを妖しく照らしている。
「もう、三十年になりますか」
「貴女と結ばれてから?」
「ええ」
「それは形の上……貴女の夫となってからのことでございましょう。実は」
別でしょうに、と言いながら、汪魚は氷湟の秘部に口付けた。氷湟は妖艶に微笑んだ。
「氷湟様……」
熱い吐息が混ざる声。清青には閨中の声とわかる。再び闇に閉ざされた世界に、雲の切れ間の如く光が漏れている箇所があった。
「姉様?」
また氷魚の声。先ほどからずいぶんと大きくなった影が、氷魚の形になってその隙間を覗く。清青はその影に追従した。中には一糸纏わぬ姿の氷湟と汪魚がいた。ふたりは氷魚の存在に気付かない。
「汪魚殿」
朔の夜である。小さな灯りが揺れ、閨のふたりを妖しく照らしている。
「もう、三十年になりますか」
「貴女と結ばれてから?」
「ええ」
「それは形の上……貴女の夫となってからのことでございましょう。実は」
別でしょうに、と言いながら、汪魚は氷湟の秘部に口付けた。氷湟は妖艶に微笑んだ。